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社団法人 日本能率協会
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開発ストーリーを追え! Vol.07 安全はすべてに優先する アジアクリエイト株式会社 業務サービス課主任 佐藤陽平さん(愛知県豊川市)
 生産現場の安全確保は製造業の最優先課題だ。アジアクリエイト株式会社では労災にストップをかける画期的な安全体感装置を開発。業務サービス課主任の佐藤陽平さんに聞いた。

安全確保に熱心なある企業の依頼から始まった。



「設計力、技術力の高さがアジアクリエイトの強み」と語る佐藤陽平さん。
 私たちアジアクリエイト株式会社は創業以来、各種専用機の設計・製造を通して技術とノウハウを蓄積してきました。さまざまな専用機を開発する中で、2007年、あるメーカーから「生産現場における危険を疑似体験できる装置を導入したい」という注文をいただいたのが安全体感装置の始まりです。この企業は主にフィルムやテープ、シールといった製品を製造。作業者がVベルトやロールに手を挟まれて怪我をするのを未然に防ぐべく、社員の安全教育のツールとして使いたいというお話でした。早速、生産現場の御担当者との打合せを行い、想定できる災害をピックアップし、そこから「プレス挟まれ体感装置」や「Vベルト巻き込まれ体感装置」といった専用機が誕生しました。すると、これが好評を得て、社員の安全意識向上はもとより、工場見学に訪れた人々の注目を集めることにもなりました。そこで「わが社でも導入したい」という声も寄せられ、、当初お話をいただいた取引先メーカーの承諾を得て、アジアクリエイトの自社ブランドとして販売することにしました。

 ひとくちに労災と言っても、その内容はさまざま。どんな機械を使って作業しているのか、作業者はどのタイミングでどのように機械と関わるのか、一見危険とは無縁に思われる盲点はどこかなど、各社の作業環境に合う安全体感装置でなければ意味がありません。ホームページやカタログで標準機を紹介していますが、実際にはこれをベースにカスタマイズしたり、一からオリジナルでつくったりする場合がほとんどです。羅針盤となるのは現場を熟知したお客様のご意見。綿密な打合せを重ね、オーダーメイドで完成させます。

衝撃を体感することで危機感を植え付ける。

 問い合わせをいただく中で、多くの方が興味を示すのが「Vベルト巻き込まれ体感装置」です。生産現場では作業者が手間を惜しんで電源を切らずにメンテナンスしようとして軍手を巻き取られたとか、惰性で回転しているVベルトを手で止めようとして巻き込まれてしまったという事故が少なくありません。この装置はVベルトとプーリーの間に割り箸を入れて、巻き込まれる瞬間の衝撃を体感させるもの。強烈な力で引っ張られ、巻き込まれた割り箸はバリバリと音を立てて粉砕されます。もし、これが自分の手だったらと思うとぞっとし、身体にじかに伝わる衝撃は目で見るよりもインパクトが大きいため、記憶に鮮明に刻まれます。もうひとつ、「ロール巻き込まれ体感装置」は模擬手をロールに巻き込ませ、引き込みの強さをリアルに体感する装置。作業服の袖口をきちんと留めずに回転体付近で作業し、袖口を巻き込まれてしまったとか、製品を無理に引っ張ろうとして逆に巻き込まれてしまったというケースを想定して開発しました。身体ごとグイグイ持っていかれる恐怖感もさることながら、反射的に抵抗してますます危険を増幅させてしまう様子がよくわかります。いずれも、機械のパワーやベルトの回転数は現場によってまちまちなので、個々のケースに合わせて調節できるよう設計しました。現場に身を置き、産業機械を操作する人ならだれでも、多かれ少なかれ「ヒヤリ・ハット経験」があるはず。どんなに細心の注意を払っていても、予期せぬところでヒューマンエラーは起きてしまいます。だからこそ、不慮の事故を未然に防ぐための安全体感装置であり、また、こうした装置を導入することで安全意識の高い会社であることを対外的にアピールすることもできるのです。

 実機よりセーフティーであることは言うまでもなく、機械に不慣れな新入社員でも安心して使えるよう配慮しています。机上の安全教育では伝えきれない災害の怖さを知らせることで、労働災害を限りなくゼロに近付ける一助になればと願っています。

新しいビジネスモデルで展開を図りたい。



顧客ニーズが出発点。設計者も営業研修に参加して営業力を鍛えています。
 既に当社の安全体感装置をお使いのお客様からリピートオーダーをいただいたり、「プレス挟まれ体感装置」や「原反チャッキング挟まれ体感装置」「定尺カッター切れ体感装置」などバリエーションに興味を示されるお客様も少なくありません。いかなるご要望にもきめ細かく対応し、各企業の作業環境に合わせた安全体感装置を開発したいと考えています。また、社員研修などで一時的に使いたいというご要望も多いことから、汎用性を持たせた安全体感装置のレンタルも計画中。さらに一歩進めて、装置と教育プランをセットにして安全研修プランを提供する新規ビジネスモデルも近々立ち上げる予定です。

 私たちは自社製品不在というこれまでの弱みを克服し、安全体感装置で念願のアジアクリエイトブランドを手に入れることができました。景気の後退にあえぐ製造業が多い中、信頼の技術力と品質を前面に打ち出して戦える自社製品は、必ず新しい活路を開くものと期待しています。事務の女性スタッフもCADの操作で設計に加わっている技術者集団であると同時に、全員営業を標榜するエンジニアリング集団。創業以来、掲げてきた行動基本方針「Always One Step Ahead(昨日と違う明日への創造)」の下、揺るぎない企業体質を築いていきたいと思います。

会社概要

アジアクリエイト株式会社
〒440-0061 愛知県豊川市穂ノ原3-14-6
事業内容/各種専用機、プラント装置の設計・エンジニアリング事業、一般労働者派遣事業、有料職業紹介事業
従業員数/22名 創業/1989年4月