うちは1つ1つの部品をオーダーメイドで作っています。「いい製品」を作り出せるかどうか=社員の力量にかかっています。しかし、これまでの忙しい時期は、管理者には管理者の仕事があり、「忙しいから…」と若手への技術伝承ができていませんでした。仕事量の減った今、団塊の世代が持っているノウハウを若手に伝える「チャンス」だと捉え、熟練の技術者から若手技術者にものづくりを伝承していくことに力を注いでいます。
例えば、1つの「受注」に対して、納品に至るまでのすべての工程を、熟練の技術者が若手と一緒になって取り組む。1つ1つの作業をペアで一緒に取り組むことで、若手の仕事の幅が広がってきています。これはこの不況の時期だからこそできることです。この取り組みは、景気が戻った時、より稼働率を上げることに繋がっていくと考えています。
ものづくりは生き物です。機械のボタンを押すこと=ものづくりではない。若手には「不況の時こそ、自らで考えて勉強してほしい。今までやってこなかったことに挑戦してほしい。今こそチャンスだ」と話をしています。
現在、月1回「全体会議」を設けています。社員全員が集まり、普段、仕事の現場では話しにくいことを話せるような「場」にしているのです。その時だけは機械はすべてストップ。若手も熟練も日頃、「考えていること」を話し合っているのです。
これは、生きた「情報」を社員同士で共有しあうためでもあります。「あの会社がこういうことを始めました」「地域でこういう取組みをしている」…こういう何気ない話が、次への新たな1歩を踏み出すヒントにもなります。新たな業種との出会いがあるかもしれない。それらをいち早くキャッチするためにも大事であると考えているのです。
私は今から約30年前、サラリーマンを経て起業しました。しかし、わけがわからずに大きな借金も抱えたこともあります。数億もの借金をした時、何も言わずに保証人これまでになってくれた方がいました。数千万の機械を無償で提供してくれた方もいました。…たくさんの方に支えられてきたかたこそ、今の自分がある。だからこそ、助けてくださった方への「感謝」の気持ちは絶対に忘れることはありません。
社訓は「人の和・信頼・感謝」です。景気の善し悪しに関係なく、一番大事なのは人間同士の「和」。「〜しましょう」と仕事の話をする以前に「人としてどうあるべきか」。お互いに「ありがとう」の気持ちがなかったら、何事も達成できないと思うのです。
信条は、ものづくりの「原点」は=人を育てていくこと。機械がものを作るのではない。人がものをつくるんです。そして、「まじめ」に取り組む。この「原点」に戻ることこそ、今のものづくりに求められていることではないでしょうか。
株式会社紀和産業
〒431-0302 静岡県浜名郡新居町新居1984−2
事業内容/真空フランジ・真空配管・真空コンポーネント・各種産業精密部品・真空部品
従業員数/50名 設立/昭和52年