オートバイをはじめ四輪車やスノーモビルの試作部品を幅広く手がけ、二輪レースの運営にも力を注ぐ同社。レースへの情熱から生まれる“ものづくり魂”を臼井社長に伺った。
目を輝かせながら溌剌と語る臼井社長。レースへの熱い思いは尽きない。
1982年創業の当社は、二輪レース用部品の製造からスタートしました。先代の社長がレース出身ということもあり、創業以来、レース車のエンジン部品や車体部品を手がけています。ロードレースや耐久レース、モトクロスのほか、排気量のクラスによってカテゴリーはさまざまですが、レース車はいずれも熾烈な戦いを完走して表彰台に上ることが目的。ゆえに、最先端技術を結集した唯一無二のマシンでなければなりません。この点が量産車と決定的に異なるところで、もうひとつの柱である試作部品の設計・製造も、少数精鋭の部品づくりという考え方から派生しています。日本を代表する一流企業がモータースポーツから撤退する昨今、創業当時に比べるとレースの数が減り、事業全体に占めるレース用部品の比率も縮小傾向にありますが、興奮と快感が渦巻くレースへの思いは変わりません。
レース用部品は“軽くて強いこと"が基本です。軽ければ軽いほどスピードを追求でき、過酷な環境に身をさらすライダーの命を守るという意味で強さは必須条件です。これまでチタン、マグネシウム、カーボンファイバなど、ありとあらゆる材料にトライし、ノウハウと実績を積み重ねてきました。レースを通して各素材の性能や効果を把握しているため、大手の材料メーカーから問い合わせを受けることもあります。こうした最先端分野に携わるやりがいと、本能を揺さぶるレースの刺激、興奮が私たちの原動力となっています。
二輪レースの魅力をアピールし、観戦人口の増加に貢献できればと、1993年、新社屋完成と同時に、レース参戦運営業務を開始しました。ロードレースは年間6〜7レース、モトクロスは年間10レースほどあり、ライダーやチームスタッフとともに開催地へ出向いて、マシンの整備やピットの設営、大会運営のサポートなどを精力的に行っています。マシンの製造に関わり、レースそのものを裏で支える私たちには、「人の命を預かっている」という重責が伴います。ボルトが一本ゆるんだだけでマシンが転倒し、ライダーの死につながってしまうかもしれない。部品の精度の追求不足が重大事故を引き起こすかもしれない。そういった緊張感は常にあり、失敗は絶対に許されないと肝に銘じています。
何かを始めることは簡単。それを継続することが難しい。
試作部品の設計、製造は新しいことへの挑戦。社員のやりがいにつながっている。
試作部品の設計・製造にあたっては、新製品のコンセプトをきちんと共有することからスタート。設計から切削加工、板金・溶接加工、品質チェックまでトータルで受注し、エンジンの性能測定や組立実験開発も行っています。試作車は開発のベースとなるものですから、最初につくった試作部品を納品したら、それでOKというわけにはいきません。お渡しした後、お客様が試作部品を仔細に検討し、改良のオーダーを次々に出してきます。開発チームの一員として、それら一つひとつのリクエストに確かな技術でお応えし、「よし、これでいこう」とGOが出るまで一丸となって取り組みます。
新製品の開発は情報が命。実績や歴史は企業にとってかけがえのない財産ですが、過去の栄光にしがみついていては新しい時代に対応できません。材料にしても、次から次へと新しい素材が登場し、実用化され、その進化には目覚ましいものがあります。これからの世の中はどうなるのか、次はどんな波が来るのかを的確に予想し、迅速かつ柔軟に対応していきたいですね。そのためには、業種や事業分野を超えて幅広く情報収集し、どこからでもヒントや発想の種を掘り起こすことが大切です。例えば、今が旬の航空宇宙のフィールドに目を向けたり、電池の展示会に足を運んだり、大学の研究室の依頼を受けて電気自動車を試作したりするなど、ジャンルを問わず好奇心いっぱいに活動しています。
これは経営陣や管理職に限ったことではなく、若手社員にも通じること。若いスタッフがソーラーバイクレースに熱中していると聞き、将来伸びていく分野でもあるので、会社として応援することにしました。先日、浜松で開催されたソーラーバイクレース大会では、自転車を改造したバイクが大半を占める中、レーサータイプの独創的な車体で出場。フリースタイルで優勝するともに、グッドデザイン賞を受賞しました。レースへのこだわりがDNAとして脈々と受け継がれていることがうれしく、また、彼らの新しいことに果敢に挑戦しようとするチャレンジ精神を誇らしく思います。何事も始めるのは簡単ですが、継続することは難しい。流行を追いかけて一時的に飛びつくのではなく、冷静な視点で未来の鉱脈を探り当て、自分たちが信じたことに粘り強く取り組んでいきたいですね。
手を動かして一生懸命つくる。私たちは21世紀の鍛冶屋です。
レースへの情熱を持ち続ける一方で、お客様からのどんなご注文にも応えていきたいという思いがあります。実際、オートバイやクルマのみならず、農機具の試作や部品の修理依頼もあり、最近では社外の発案者とともに農業用補助具を開発して発売に漕ぎ着けました。当社は手を動かして、ものをつくる鍛冶屋です。ただし、ご要望通りのものを提供するだけでなく、知識と情報、さらにはワクワク感をプラスして、世の中にまだないものを生み出していく「21世紀の鍛冶屋」です。胸を高鳴らせ、自らの手を信じて、テクノ・モーターエンジニアリングならではの流儀で社会に貢献していけたらと考えています。
株式会社テクノ・モーターエンジニアリング
〒438-0801 静岡県磐田市高見丘1231番地
事業内容/二輪車、四輪車、スノーモビル等の試作部品の設計、製造、エンジンの性能測定及び組立実験開発、試作車及び試作機の製作、新素材による先行開発、各種治工具の設計・製造、機械・工具の販売
従業員数/52名 創業/1982年12月