新商品が続々と登場し、日々、熾烈な販売競争を繰り広げるパーソナルアクセスネットワーク商品の市場。常に勝ち続けるためには何が大切なのか、中山統夫さんに聞いた。
無線LANルータの機構開発に携わる高林広貴さん
当社ではパソコン周辺機器やネットワーク複合機、車載機といった、主に個人向けの製品を手がけています。パーソナルアクセスネットワーク市場では、新しい機能を搭載した新商品が矢継ぎ早に発売され、日々、熾烈な販売競争が繰り広げられています。各分野で確実にシェアを伸ばし、激しい競争に勝ち続けるためには何が最も重要か。それは製品づくりを担う現場の熱意に他なりません。私たち社員一人ひとりが胸に刻んでいるのが、「常在戦場(じょうざいせんじょう)」の精神です。これは旧越後長岡藩主牧野家の家訓第一条で、「戦場にある者は一瞬たりとも気を抜かず、終始神経を研ぎ澄まして事に当たれ」という意味。時や運の味方を得て、たった一度の戦いに勝つことは珍しくないものの、延々と続く果てしない競争に連戦連勝するのは並大抵のことではありません。私たちの目標は継続的に勝ち続けること。そのためにはまず社員の意識からと、企画、開発、設計、製造、生産、販売、保守サービスといった各部門において、自律の精神を徹底させているのです。
時代のキーワードは「環境」であり、ものづくりの肝は「品質と効率」です。当社の製品の中から無線LANルータを例にとってお話ししましょう。無線LANルータの形状は年々スリム化し、省スペースと同時に省エネが求められています。当社では、企画・開発段階からプラスチックの使用量を減らしたり、基板の部品点数を少なくしたりするといった設計を心がけ、従来の自社製品に比べ31%も消費電力をカットできる「ECOボタン」を搭載したモデルを生み出しました。また、環境に負荷を与えるミラー塗装をやめ、射出成形にあたってはプラスチックの注入口を検討して流動解析を行うことで、成形時間の短縮にも成功しています。単に製品の性能を高めるだけでなく、環境をにらみながら進化させることが我々の使命。これからのものづくりは複眼で取り組まなければなりません。
こうした開発構想を受けて、ものづくりの屋台骨ともいえる生産現場では、トヨタ生産方式方式(ジャスト・イン・タイム方式)の採用や、若手が考案した自作のオリジナルラインによってムダを排除。環境を強く意識した生産体制を築いています。先ほどお話しした無線LANルータは大半がレンタルであるため、現場では回収したレンタル機器を基盤とモールドに分解するところから作業を始めます。コストの約9割を占めるプリント基板はダウンロードと初期化によって再利用し、外観基準に達していないモールドは社内の「ものづくり推進センター」へ送ってリサイクルします。可能な限り社内でリサイクル処理する「クローズド・リサイクル」、業界トップクラスの環境配慮型製品を自社で認定・登録するNEC環境ラベル「エコシンボル」など取り組みはさまざまですが、一番大事なのはコストをかけず、知恵と工夫によって環境・品質・効率を成し遂げること。若手のやる気と発想に期待し、情熱を持って前向きに取り組んでもらえるようバックアップしています。
自作ラインで効率アップに成功した村松愛斗さん
何でもかんでもコストが安い海外で生産すればよいという時代は終わりました。ここ数年、海外の人件費は上昇傾向にあり、商品サイクルの短縮化に伴って今まで以上のスピードが要求されるようになっているからです。こうした状況を踏まえ、当社では国内で販売する製品は国内で生産し、市場の変化にスピーディーに対応する体制へとシフトしました。海外よりも安く、しかも速くつくるにはどうしたらよいか。まだまだ考えなければならないことがたくさんあります。トップダウンで人を動かすのではなく、ボトムアップで職場の活力を高めるのがNECアクセステクニカ流。どんなポジションにあっても創意工夫を忘れず、社員一人ひとりが主体性を持ち、互いに刺激しあって盛り上げていけたらと願っています。
NECアクセステクニカ株式会社
〒436-8501 静岡県掛川市下俣800番地
事業内容/パーソナルアクセスネットワーク商品の企画、開発、設計、資材調達、生産、販売、保守サービス
従業員数/1776名 創業/1970年4月(静岡日本電気株式会社)、2001年に現在の社名に変更