「自分の設計した工作機械で世界に革命を起こしたい」
河村さんは、名古屋工業大学工学部機械工学科を卒業している。学生時代から、モノづくりの上流を支える工作機械に興味を抱いていた。
就職活動の一環として、何気なく訪れた岐阜県関市にあるナガセインテグレックス。それまでは社名さえ知らなかったという。河村さんは、会社に足を踏み入れて驚いた。黒壁の展示場には、ナガセの工作機械の技術で実現した「鏡面加工」のサンプルが所狭しと並んでいた。
「砥石を用いて加工しているとは思えないほど、どの製品も光り輝いていました。これだけ高精度なものを研削加工で実現する技術は、本当にすごいと思いましたね。現場を見て、工作機械に対する可能性に魅せられて入社を決めました」
超精密・超微細加工を実現する工作機械の開発・製造を通して、ナガセインテグレックスは「ナノの世界」に挑み続けている。携帯電話、液晶テレビ、デジタルカメラ、自動車……ハイテクノロジーの最先端で、既存の技術では不可能とされていた究極の小型化・軽量化・薄型化を支えてきたナガセの技術は今、国家プロジェクトにも応用され始めている。
入社2年目を迎えた河村さんは今、工作機械の開発から設計、顧客との打ち合わせなど、すでに重要な仕事を任され始めている。
「これだから、こうしなければならない、という答えはありません。常に自分の発想力やアイデアが試され続ける仕事。でも、最先端を行くとは、こういうことなんですよね」
現在、ナガセインテグレックスが、京都大学・名古屋大学・国立天文台・ナノオプトニクス研究所と連携して開発を進めているのが、2012年に岡山市に完成予定のアジア最大の天体望遠鏡の反射鏡加工だ。この望遠鏡は18枚の反射鏡を組み合わせ、直径3.8mの1枚の反射鏡を形づくる世界初の「分割鏡方式望遠鏡」である。
「こうした世界初に挑戦していけるのは、エンジニアとしてたまらなく嬉しいことです。いつか、自分の作る工作機械で世界に革命を起こしたい。とてつもないものを生み出してみたい。これからも“限りなくゼロ”を目指して、とことんまでナノの世界を追求していくつもりです」
株式会社ナガセインテグレックス
〒501−2697 岐阜県関市武芸川町跡部1333−1(本社・工場)
事業内容/超精密加工の工作機械、鍛圧機械、電子測定機器、産業機械などの製造・販売
従業員数/124名 創業/1950年