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「E-LINK」最新号&バックナンバー
社団法人 日本能率協会
日本能率協会様のご協力により、E-LINKから技術者の皆さんに役立つ「セミナー」を提案しています。
ものづくり企業 新世代の経営戦略 vol.09 得意分野に磨きをかけろ。 株式会社タムラ(愛知県春日井市)代表取締役・田村勇作さん
 職人気質の先代が築いた基盤を積極的な設備投資と抜群の営業力で発展させた2代目社長、田村勇作さん。厳しい時代をものともせず、愛嬌たっぷりの口調で未来ビジョンを語る。

品質さえよければいいという時代ではない。



明朗快活な人柄の田村社長。20代の頃はバックパッカーとして世界を放浪した。
 当社は昭和41年、私の父である先代の社長が田村鉄工所を起こしたのが始まり。昭和63年に株式会社タムラに法人化し、その後、春日井市や小牧市にあった工場を集約して現在に至ります。産業機械や機械装置、半導体機械部品、液晶部品等の切削加工をメインに、鉄、アルミ、ステンレス、銅など切削できるすべての加工材料に対応しています。

 一線を退き、今なお健在の先代は筋金入りの職人。汎用旋盤の使い手として知られた“削りのスーパーマン”だけに、いい加減なものをつくると烈火のごとく怒りました。経営には非常に慎重で、石橋を叩いて渡るタイプです。かたや私は、新しいもの好きで社交的。性格が180度違うので、若い頃はよく対立しましたね。社長に就任する時、父に「俺は俺のやり方でやる」と宣言し、それまでの“鉄工所の削り屋”というイメージを一新しようと試みました。製造業が成熟期を迎え、今までと同じやり方では通用しない、もっと効率的な生産体制を築くべきだと考えたからです。他社に先駆けて最先端の大型設備を導入し、工場にはCNC旋盤やCNC複合旋盤、5軸制御立型MC(マシニングセンタ)など高精度加工が可能な機械設備がズラリと並びました。当時、自動車業界では既に5SやQCが当たり前となっていましたが、他の製造業は大きく立ち遅れていた。照明も不十分な真っ暗な中で油まみれになって働いて、「品質がよければ文句はなかろう」と言っても、お客様を説得することはできません。きちんとした環境で、きちんとした作業者が、きちんとしたものをつくる。品質と信頼のためのいち早い先行投資は正解だったと自負しています。

 振り返ってみると、こうした思い切った現場改革が実現できたのは、創業期の堅実経営があったからこそだと思います。どんなに時代が進んでも、やっぱりものづくりの要は品質なんです。削り屑ひとつ落ちていないピカピカのフロアを歩きながら、私には相も変わらず“鉄工所の削り屋”という自意識が根強く息づいている。2003年にISO14001認証を取得するなど、現在も現場改革の手はゆるめていませんが、父の頑固なまでの職人気質を体内に宿した自分は「それもこれもすべて品質のため」と信じて現場を見つめています。

抜きん出るカギは、人と得意分野を育てること。



先端設備が並び、5Sが徹底された工場。ボトムアップで品質管理に取り組む。
 設備投資や5Sの徹底とともに、人材の育成にも力を注ぎました。どんなに優れた設備がそろっていても、それらを操作するのが人である以上、人材が育たなければ宝の持ち腐れになってしまうからです。当社の場合、入社時に切削加工の経験がある者は極めて少なく、ほとんどが初心者です。素人同然の彼らは余計な色に染まっていないため、何事にも素直で一途。工具の使い方やワークの削り方を一つひとつ手取り足取り教えると、まるで乾いた土が水を吸い込むように、ものすごい勢いで吸収します。スキルを身に付け、キャリアを積んだ彼らは、今や職場になくてはならないキーマン的存在。リーダーとして現場をまとめ、若手の指導にも精力的に取り組んでくれています。少数精鋭で高品質を生み出し続けるためには、各自がいろいろな機械を操作できるようにならなければなりません。CNC旋盤、NCフライス盤、MCなどをローテーションして学ばせることで多能工を育成し、社外の研修にも積極的に参加させて、広い視野を持てるようバックアップしています。

 規模の大小はあるにせよ、各社が軒並み先端設備をそろえ、納期対応や見積り面で横並びとなった現在、差別化のカギは得意分野をいかに伸ばすかに尽きると思います。タムラの得意分野を確立し、自信を持ってアピールするためには、社員一人ひとりが今まで以上に難しいことをクリアしていく必要があります。「ものづくりはイマジネーション」というのが私の持論で、ここを集中的に鍛えれば個々の能力は格段に伸びる。結果、タムラの技術力も大きくレベルアップする。私が社員に掲げるハードルは決して低くはありません。でも、しゃにむに食らいついてきてほしい、そう強く願いながらともに汗を流しています。

ビジネスチャンスを掘り起こす。

 これまで半導体装置部品や液晶部品の受注が多かった当社ですが、これからは産業の枠を超えて、さまざまな業種と幅広く取引関係を築いていきたいと考えています。ひとつのメーカーとの取引は小さくても、数が増えれば新しいことにチャレンジでき、技術の研鑽にもつながるからです。今、注目しているのは、電池系や太陽光発電系、航空機関連の企業。いずれも競争相手が多く、パイプの構築は一筋縄ではいきませんが、持ち前の営業力で切り開きたいですね。また、これはまだ構想段階ですが、部品樹脂や焼入れ、放電加工などの企業と共同出資して、ベトナムに修理工場兼アンテナショップを出店しようと計画しているんです。中国の2010年の予想成長率は9%。膨張する中国市場を視野に、ビジネスチャンスを掘り起こすのが狙いです。まずは新しい取引先の口座を一つでも多く増やすこと。社員全員の努力と汗に報い、彼らの成長意欲に応えるためには、これからも積極果敢な経営者であり続けなければなりません。立ち止まったら、そこでおしまいですからね。

会社概要

株式会社タムラ
〒480-0303 愛知県春日井市明知町1423番地の74
事業内容/各種機械部品及び設備部品全般の複雑形状切削加工、自由曲面切削加工、精密切削加工
従業員数/30名 創業/1966年4月