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20代技術者の肖像 vol.04 父の背中の向こう側に見えてくるもの。 株式会社ポリシス ウレタン樹脂開発 毛利隆人さん(29歳)


「自分で作ってみたものを父に見せると、意見や視点がまったく違うのが面白い。それぞれの視点を組み合わせていく開発過程が面白い」と毛利さん。先輩エンジニアでもある父(写真右から2番目)の背中を追い続ける。



父の開発した「ハプラフリーレ」。60度の熱を加えると粘土状になり、常温で放置しておくと固化するという特性を持つ。身障者が持つスプーンの持ち手などに役立っている。



自己粘着性を持つ「ハプラタックゲル」は、地震などで家具や文化財の倒壊防止に、またマンション床下材などに採用されている
 毛利さんは、社長でもある父の俊甫さんからこう言われていた。「おまえに会社は継がせないから」。もう世襲の時代じゃないんだから、それも当たり前のことだろうと思い、毛利さんは大学で光工学を専攻することにした。

 大学卒業後に選んだ進路は、光ファイバー通信のエンジニアだった。光ファイバーは、すでに研究に研究が重ねられ、ほぼ完成に近い技術。次にどんな新しい技術を開発し、展開してくか……なかなかテーマが見つけにくいのが現実だった。

 ちょうどそんな時、父の右腕として働いていたエンジニアが病に倒れた。父に初めて「助けてほしい」と頼まれた。26歳。人生の歩むべき方向が急激に変わった。

 光工学から化学へ。まったく畑違いの分野で新しい1歩を踏み出すことになった。ウレタン樹脂の開発について、父から長々と説明を受けた。なかなかテーマが見つからず苦労していた光ファイバーのエンジニア時代からは、想像もできないことだらけだった。「掟破りをすることから始める」。父のやってきた開発には夢があると思った。

 ウレタン樹脂は、化学材料の配合を工夫して、何度も「掟破り」を重ねていくことで、新しい商品を作り上げていく。この掟の破り方にエンジニアとしての個性が出る。「こういうものを作れ」と同じテーマで開発をスタートさせても、4人エンジニアがいれば、4通りのものが出来上がる。そこが面白い。

 俊甫さんが開発した「ハプラフリーレ」というウレタン樹脂は、60度の熱を加えると粘土状になり、そのまま常温で放置しておくと固化するという特性を持っている。自由に形をつけることができ、身障者が持つスプーンの持ち手などに活用されている。会社に身障者の方がくると、俊甫さんはその場で握った部分の指の型を取り、スプーンを作ってあげる。そんな父の姿を見て、毛利さんは父が開発に没頭している本当の意味を知る。

 入社して3年。まだまだ今は、勉強しなければならないことだらけだ。毛利さんはいう。「目標はもちろん、自分が開発したウレタン素材が商品化されること。“環境"をテーマにでんぷんやブドウ糖など自然界にある素材を使って、これまでにない新しいプラスチックを作ることができたらいいなと。自分の開発した材料で世の中に貢献したいです」。

 そのためには、父に負けないように、これからも何度も「掟破り」をしていかなければならないだろう。常識を覆す、勇気と、根気と、好奇心と。小さな開発室でいつも真剣にビーカーと向き合う父の後ろ姿から、毛利さんは多くのことを学び、そして自分の未来を想像する。

会社概要

株式会社ポリシス
〒434−0035 静岡県浜松市浜北区寺島2374−1
事業内容/ウレタン樹脂の素材開発・研究
従業員数/8名 創業/2004年